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【保有銘柄紹介】ASNOVA

2024年4月22日更新

ASNOVAは、23年10月から保有。最大ポジションを持っているので情報を詳しく整理します。

保有銘柄の特徴をしっかり理解しておかないと、狼狽売りで損失を被る可能性があるので、定期的にアップデートします。

なお、個人の見解や願望が多分に含まれており、情報が正確・最新ではないかもしれないので御容赦下さい。

概要

  • この会社の特徴を一言で言うなら、「大手にとっては小口の受け払いが煩雑で手出しされていなかった中小規模事業者向け足場レンタル事業に目を付け、上場で得た資金力と長年培ってきた足場管理ノウハウを武器に、全国各地に出店して足場レンタルの潜在需要を掘り起こしながら顧客を増やし事業を拡大していくビジネス」

出典:ASNOVA決算説明資料

強みと参入障壁(収益化障壁)

  • くさび式足場のレンタルに特化し、①低い棚卸差異率(0.002%/四半期ごと)に代表される足場管理ノウハウと②圧倒的な拠点数(足場保有量)が競合他社には無い強み。

出典:ASNOVA会社説明資料

  • 参入障壁は低いが、収益化障壁がある。足場管理ノウハウ(低い棚卸差異率、足場修繕管理による長寿命化、徹底した受払管理など)が事業の肝であり、新規参入者は足場をまともに管理出来ないので採算が取れず数年で撤退に追い込まれる。既存会社も規模を拡大できない理由となっている。単純な資本力だけでは勝負できない事業領域である。

  • 業界平均の棚卸差異率は3%/年。レンタル事業は言い換えれば金融業なので、棚卸差異などの損失を防がないと収益率が低下するどころか不採算事業になる。

顧客と需要

  • 主要顧客は住宅や中低層マンション修繕向けの足場施工業者。修繕の必要な物件が年々増加傾向にあるので、足場需要は拡大傾向。20年後には修繕が必要な築40年以上の老朽マンションが3.5倍になると見込まれている。その他、近年は自然災害復興需要向けも増えつつある。

出典:ASNOVA会社説明資料

  • 主要顧客となる中小足場施工業者は、自前で足場を一定数保有するが、それを超える足場工事受注があったらレンタル足場で対応するというのが主なASNOVAの利用方法。足場施工業者が全て自前で足場を保有しておけば償却後利益率は高まるが、足場保有量を増やすためには足場購入資金と保管場所の拡張などが必要である事に加えて、閑散期における稼働率低下が不可避となる。それならばレンタルで対応しようということになる。

  • 近年の鋼材価格上昇などインフレにより、購入よりレンタルのニーズが高まっている。このレンタルニーズの高まりはタカミヤやアルインコなど他の足場レンタル会社でも同様の事象が起きている。

  • 集客は、既存ユーザーからの紹介が主体。紹介料を払って拡大。リピーターを獲得している。他はウェブサイトからの集客でSEO対策中。新聞広告は東証上場時のみ。営業の仕事は与信管理。

  • 主要都市など大きな需要が見込まれる地域には直営機材センター、比較的少ない需要のところはパートナー企業を通して出店ニーズに答えている。

出典:ASNOVA決算説明資料

認知度

  • 足場レンタルの認知度は低い。認知を広げるために、ASNOVAは紹介料を払って既存ユーザーから新規顧客の紹介を受けたり、顧客収益UPのためのノウハウも提供しており、自前の足場とレンタルを併用することで稼働率、すなわち収益率が上がるというレンタルメリットの認知を広げ、潜在需要の掘り起こしている。

  • 足場工事の一般社会における理解度も低い。「足場代が高い」と不満を漏らすマンション住民が一定数いる。足場工事は塗装防水工事のおまけみたいなもので無料だと思われている。「足場代無料」を謳う業者もあるが、別項目に代金を上乗せしてあるだけで、人手がかかっているものを無料にできるわけがない。必ず客側が費用負担する仕組みになっている。

競合関係

  • 資金力のある大手レンタル会社とは競合関係に無い。大手レンタル会社は大手ゼネコン相手で手一杯なので、小規模事業者相手で手間がかかる上に規模の小さいの市場に新規投資リスクを負ってまで手を出す余裕が無い。

出典:ASNOVA会社説明資料

  • 例えばタカミヤとアルインコが足場レンタル大手だが、次世代足場に注力し、高層マンションや社会インフラなど大規模工事を事業領域としているので、小規模工事とくさび式足場を事業領域としているASNOVAとほぼ競合しない。また、タカミヤとアルインコは足場レンタルのみならず、製造も行っている点でレンタル特化のASNOVAとは異なる。販売とレンタルが両方出来ることは一見強みに見えるが、一長一短ある。近年の鋼材価格上昇局面においてはレンタルは伸びるものの、販売を伸ばすことができず、製造工場の稼働率低下や在庫増加が業績の重荷となる。

  • タカミヤとアルインコの中期経営計画を見ても、次世代足場のシェア拡大が最優先事項に見える。枠組み足場から次世代足場の置き換えとレンタル強化を掲げているので、今後もASNOVAの競合になる可能性は低そう。

  • 足場王が足場レンタル専業で最大の競合だと思われ「業界ナンバーワンの棚卸差異率0.001%」を謳っている。ASNOVAによると「棚卸差異率の業界平均は3%で簡単に低くできない」というが、足場王はASNOVA以上に管理が徹底できているように見える。ということは、競争優位性を揺るがすものになってしまうのではないか?という疑問が出る。 この疑問についての答えは、「足場管理は棚卸差異率の低さだけなく受払差異発生時の弁償請求も重要」である。ASNOVAは「当社は受払差異があったときに管理に自信があるので取引先に強気に出て弁償してもらうことができているので利益率が高い。一方他社は管理に不安があったり業界の慣習で受払差異があったとしても取引先に強気に出れず弁償してもらえないので利益率が低い。競合他社は、このような適切な足場管理ができないので、足場保有量を増やせないし、事業拡大できない。」と主張している。つまり棚卸差異率をいくら低く抑えても、受払差異で損失を出していれば意味が無いということである。足場王は非上場であり業績が見えないので憶測にはなってしまうが、足場王の状況を見てみると、主要都市のみ9拠点で、2021年を最後に沿革が更新されておらず、事業拡大が進んでいない。ASNOVAの主張が正しいならば、受払差異などでの損失が事業拡大の足を引っ張っているという見方もできる。

収益構造と成長投資

  • 利益の源泉は、足場の償却期間と使用期間の差。足場の減価償却費が原価の大半を占めるので、足場の償却期間が終われば営業利益は急拡大する。現在は投資フェーズであり、営業利益率は10%程度だが、償却済みの足場が毎年積みあがっていくので、利益率は徐々に改善していき、最終的に回収フェーズに移れば50%程度まで拡大する。

出典:ASNOVA会社説明資料

  • 回収フェーズがいつ来るのかは足場の需要次第。高経年マンションストック数の増加や住宅リフォーム需要は今後ますます拡大するので、少なくとも10年先。出店拡大は2026年までに50拠点で一段落するが、需要次第で再拡大の余地がある。

  • IRでも回収フェーズの時期について質問が毎回寄せられている。しかし、回収フェーズは会計上の損益の話なので、CFを見れば常に回収フェーズであると言える。よって、「回収フェーズの時期はいつなんだ?」という質問はあまり意味がなく、将来目指す足場保有量の目標値を見たほうがよいと考えている。

  • 事業拡大のための出店コストは低い。足場は屋外保管できるので、安い市街化調整区域の土地を買い、少数の作業機械と5人程度で現場を動かせる。さらにASNOVA stationならパートナー企業の人材資本を活用できるので必要なのは足場だけなので利益率が高い。

  • 足場保有量と稼働率でおおよその収益が決まるので、業績見通しの精度は高い。

  • 下期業績偏重の季節性がある。3Qが繁忙期。一方1Qが閑散期で稼働率が比較的低く、現在の投資フェーズ段階においては減価償却費の期間按分が重荷になり、1Q固有の費用計上も重なるので赤字になりやすい。

  • 足場投資の資金回収期間は稼働率60%で4年弱。年率25%以上の高利回り。直近の稼働率は75%を超えているので実際にはもっと高い利回りになっていると思われる。

  • 投資資金は借入で調達。増資するより安い。東証上場時には基準を満たすための最低限の売り出しと増資を実施。

  • 年間20億程度の投資が成長の適正スピード。人材育成と用地確保がボトルネック

出典:ASNOVA会社説明資料

M&Aについて

  • 「検討はしていないがやらないわけでは無い」とニュートラルな状態。

  • 直営出店については買収での拡大を考えていない。既存の足場レンタル業者では業界の慣習に染まりきっているため、教育してもルールを守らない可能性があるためである。1から作った方が効率的というわけである。

  • ASNOVAstationのパートナー企業を買収する事は考えていない。地域の需要が予想より遥かに大きければ選択肢に入ると思うが、そうなれば直営機材センターを出店すると思う。

IRが素晴らしい

  • もはや東証の中でもトップクラスのIRと言えるのではないか?規模の割にIRがしっかりしている。質問に対する回答も(内容によると思うが)早い。HPは洗練されている。四半期ごとにわかりやすい決算資料と説明動画を作成している。新規出店時にはYouTube動画もup。社長以外のIR露出が増えており全員参加の印象を受ける。

  • 足場業界の労働環境は一般的に過酷なため、会社のみならず業界のイメージアップを意識していることが見て取れる。

  • 認知度向上を目的として、インフルエンサーとの対談だったり、個人投資家向けIRセミナー動画だっ無礼なたり露出を増やしている。kabuberryの2023.6.17動画は必見。

各種リスク

  • 最大のリスクはリフォーム業界への依存。特定取引先への依存は無く広く分散しているが、業界は集中しているため、コロナ禍では一時的に需要が停止し打撃を受けた。長期的には、過剰な人口減少や景気低迷、人手不足により、リフォームされずに放置される物件が増えて足場レンタルの稼働率=収益が悪化するリスクがある。

  • ただし、次の成長ドライバーであるベトナムでの事業展開にも着手しており、仮に日本で足場需要が無くなったとしても、足場受け入れ先を準備し、座礁資産にならないよう対策している。

出典:ASNOVA会社説明資料

  • 新規参入による競争激化もリスク。ASNOVAの足場管理はそう簡単に真似出来ないという自信を持っているが、10年以上かけて培ってきたノウハウならば、それだけ時間をかければ適切な足場管理が可能であるということを意味している。直近の資材高騰で、足場レンタルニーズの高さは他社も認識しており、足場販売や足場工事請負だけで無くレンタル事業強化を打ち出す企業もある。故にシェア獲得のスピード勝負の時代に入っているといえる。ただし、拠点数と足場保有量、毎年の投資額の面から見ても競合他社を圧倒しているので、競争優位性を脅かす会社は今のところ見られない。

  • 足場の規格変更のリスクは低そう。ただでさえ人手不足の中で、既存の保有足場を買い換えさせる法改正をすれば、足場施工業界の費用負担にたえられず崩壊する。仮に変更があってもベトナムで再利用出来る。

  • 次世代足場への置き換えリスクは低そう。次世代足場の弱点は、メーカーごとに仕様がバラバラである事。(くさび式足場は共通仕様)。ある程度淘汰が進んでからの話になりそう。差別化しないと儲からないのは理解できるが、利用者そっちのけで自社都合優先になっているのは業界としてどうなのか?と感じる。利用者目線になると「どれか一つに統一してくれよ」となる。

  • 価格競争リスクについて。顧客はレンタル価格よりも「借りたい時に借りることが出来るか?」を最重要視している。需要が多いのに加えて、足場が設置されていなければ工事が始まらないからである。よって、価格競争はまだ起きていないが、これから先、競合が増えて需要が減少した時にリスクとなる。

  • いわゆる「上場ゴール」リスクについて。東証上場時に上場基準を満たす最低限の増資売り出しのみ実施している。社長が保有株売り出しに否定的。以上を考慮すると上場ゴールリスクは考えづらいが、絶対は無いので継続的に見ていく必要がある。ベトナムの次の事業展望を待っている。

足場関連法改正の影響は限定的

  • 足場関連の法改正で、2024年4月から原則として一側足場ではなく本足場の設置が必要になる。この事から「足場の使用量が2倍になるので、足場関連企業に特需」とSNSでは話題となっている。確かに、街中の住宅リフォーム現場を見てみると一側足場を使っているところをある。しかし、基本的には狭いところ(隣の家との幅が1mも無い)に使われている。スペースの都合は法改正したところでどうにもならないので、影響は限定的だと予想している。

出典:厚生労働省

株主還元

  • 投資フェーズではあるものの、配当と株主優待を実施している。

  • 優待利回りだが、株価600円であれば最大5%になる。60万円(1,000株)保有で3万円のプレミアム優待倶楽部ポイントが貰える。

  • 株式分割の度に優待拡充を繰り返してきたので、株主還元の強い意志を感じる。

株式の流動性は低い

  • 株式の流動性が低いこともリスク。名証時代よりマシになったが、出来高は比較的少なく株価が乱高下しやすい。投資系インフルエンサーのポスト一つでストップ高気配になる。これについて、四半期報告書の事業リスクの項目に「今後は大株主に一部売り出し要請などする方針」との記載がある。大株主はおそらく社長のことを指しているが、社長の過去の発言によると当面売り出しや増資する気は無いと言っているので、いつ改善されるか分からない。当面は業績アップで株価上昇する度に株式分割していくくらいしか無さそう。

出典:ASNOVA四半期決算報告書

直近業績と投資判断

  • 24.3Q業績について。営業利益については当初の会社想定を上回る進捗。1Q決算資料の3Q累計営業利益想定は190百万円程度(グラフから目算)だが、実績では222百万円で着地している。東証G上場に伴う一過性の広告宣伝費(日経新聞一面カラー広告)27百万円も消化している。4Qに出店一過性費用が集中することを考慮しても順調な進捗と言える。

↓3Q実績

出典:ASNOVA決算説明資料

↓1Q実績時点の3Q想定

出典:ASNOVA決算説明資料

  • 次回決算発表の注目点は、中期経営計画の上方修正の有無。24年3月期は当初想定していた投資額を増額し、今後数年は同水準を目指すとしているので期待している。

  • 最重要KPIは、足場保有量と稼働率

  • グロース企業は「社長の意思」で会社が左右される部分が大きいので、社長の言葉には注目している。

  • 会社の想定通りに成長し、社長の発言に矛盾や違和感が無く、業績予想が信頼出来る限りは10年以上の保有を目指したい。

  • 現時点でPF最大ポジションでありこれ以上買い増しする事はない(資金的にこれ以上買いたくても買えない)。

  • 企業価値算定方法について、間違ってるかもしれないが私の考え方は次の通り。ASNOVAの足場保有額は150億円あるが、そのうち100億円が償却済(投下資本回収済)である。足場は比較的容易に売れるので、償却済足場を中古価格(50%)に換算すると50億円。これに純資産30億円を足すと80億円。時価総額がこれを下回っているなら買いだと判断している。こう考えればPER30~40倍であっても怖くない。

直近のニュース

  • 4Q末に怒涛の出店ラッシュ。埼玉岐阜に2直営。北海道愛媛に4パートナー。24年3月期は計画通りの出店で無事着地。約束を守る企業は信用できる。偶然なのかはわからないが、毎日IR動画を出して「急成長を印象付けたい」ために出店日を意図的にずらしているように見える。昨年は出店してもIRでは目立たなかった。

  • 出店傾向を見ると、地方よりも人口密集地の大阪名古屋東京周辺にまだまだ需要と出店余地があり、強化しているように思える。中計によると今後2年間で+14拠点の50拠点まで増やす計画。足場需要の拡大が想定を上回っている事が本当なら、次中期では更なる出店(+20拠点程度)を計画するであろうと考える。

  • 5月からは月次実績の開示スタート。月次実績開示はストックビジネスとの相性がよく、エリアリンクなどもやっている。まだ機関投資家が投資できるほどの時価総額ではないが、将来の情報格差が少なくなるのはありがたい。